浮気

紺のコートと留守番電話。

まだ私がうら若き学生だった頃。
クラブで出会った30代の男性とお付き合いをしていた。
田舎育ちの私にとって、10以上も年の離れたクラブで遊ぶ大人の男性はとても魅力的に見えたし、彼が一人暮らしをする街はとてもオシャレに見えた。
「あえて選んだ」というレトロなアパートも私の目にはかっこよく写ったし、仕事で忙しいと連絡が稀だったのも「大人だなぁ」と感嘆したものだった。

 

その彼と付き合って数日月後、だんだんと電話連絡が取れなくなった。
メールも忙しいと返信が遅くなり、やっと電話がつながったと思えば「仕事で忙しいのに、そんなに負担をかけないでくれ」と言われた。
鈍感な子供の私もなにかがおかしいと思い始め、何度目かの約束すっぽかしをされた時、ある計画を決意した。

 

簡単に言っちゃえば「おうち直撃」なのだが、遊び人の彼が確実に家にいる時間をしっかりリサーチしての作戦だ。
前日に彼御用達のクラブのイベントがある日。
彼は飲食店勤務だったため、仕事後クラブに現れ明け方まで遊んでいる。
当然浮気をしているならそこで女を見つけているだろう。そのまま家に連れ込んでいるはず。(もちろん自分がそうされた経緯がある)

 

その日はとても晴れた良い天気で、私はお気に入りのおしゃれな彼の街をズンズンと進んでいった。
あえて住んでいるというレトロなアパートは、よくよく見ればとても貧乏臭い。
カンカンとわざと階段を鳴らして二階に上がる。
なんだかちょっと楽しくなってきながら、扉の前に立ち携帯にかける。
何度目かのコールの後に彼が出た。
間髪入れず「家の前にいるよ♪」

 

部屋の中で慌てた様子が伺えた。ニヤニヤが止まらなくなる。
服を探しているのだろう、バタバタと音がして扉が空いた。
不自然に狭く扉を開けて、体で固定する彼。
なぜ部屋を見えないように立っているのだろうか。
「どうしたの?いきなり」と尋ねる彼に「最近会えないから来ちゃった(はあと)」と可愛く答えた。
彼は「今日は用事があるからごめんね!今日はっ帰って!」と目をそらしながら言う。
「そっか〜残念!」と答えながら可愛く引き下がった。

 

明らかに部屋には女の気配がしていた。
もともと彼には冷めていたし、そこで引き下がって泣きはらす、なんてのもなんだかバカバカしかった。
お気に入りの街をUターンしながら、もうここには来ることもないよなぁとちょっぴり寂しくなって。
もう来ることもないなら、なにしてもいいかな、と思う。

 

おもむろに彼に電話する。
携帯ではなく、家電に。
きっと彼女と浮気相手の対面を回避して、彼は安堵の中浮気相手と仲良くやっているのだろう。
そんな時だから、もちろん出ないはず。
コールは虚しく響いて、電話は止まった。

 

そして『留守番電話』に切り替わった。

 

留守電になるとスピーカーホンになって相手の声が部屋中に響くのを私は知っていた。
大きく深呼吸をして、おしゃれな街の真ん中で叫ぶ。

 

「うわきしてんじゃねーーーーぞこのバカが!!!」

 

近くを歩くおじさんが振り向いた。
犬も振り返った。笑顔で「もう電話かけてくんなよ」と言って電話を切った。
それから2時間、たっぷりもう来ることはないその街でショッピングを楽しみ、浮気記念に紺色の可愛いコートを買った。
オレンジのボタンがついたAラインのレトロなコート。

 

先日服を整理していたらそのコートを見つけたので思い出したお話。

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